新型コロナウイルスのワクチン接種が広まるにつれて、一部で「ワクチンを接種した後に髪が抜けた」という声が聞かれるようになりました。このことから、ワクチンそのものが脱毛を引き起こすのではないか、という不安を抱いている方もいるかもしれません。この問題について、現時点での医学的な見解はどうなっているのでしょうか。結論から言うと、新型コロナワクチンが「直接的な原因」となって脱毛を引き起こすという、明確な科学的根拠は、現時点では確立されていません。大規模な臨床試験や、その後の追跡調査においても、脱毛がワクチンの重大な副反応として公式に認定されているわけではありません。しかし、それでもなお、ワクチン接種後に脱毛を経験する人がいるのはなぜでしょうか。その可能性として、いくつかの間接的な要因が考えられています。まず、最も可能性が高いのが、コロナ感染後と同様の「休止期脱毛症」です。ワクチン接種は、ウイルスから体を守るために、意図的に免疫システムを活性化させる行為です。この免疫反応の過程で、発熱や倦怠感、頭痛といった、いわゆる副反応が起こることがあります。この副反応が、体にとっては一つの「肉体的なストレス」となり、それが引き金となって、一部の髪が休止期に移行し、数ヶ月後に抜け落ちる、というメカニズムです。また、ワクチン接種に対する過度な不安や恐怖といった「精神的なストレス」も、同様に休止期脱毛症のトリガーとなり得ます。つまり、ワクチンそのものが毛根を攻撃するのではなく、ワクチン接種というイベントに伴う、体の「ストレス反応」が、間接的に脱毛を引き起こしている可能性が考えられるのです。また、単なる偶然の一致である可能性も否定できません。脱毛が始まるタイミングと、ワクチン接種のタイミングが、たまたま重なっただけ、というケースです。いずれにせよ、ワクチン接種後に起こる脱毛のほとんどは、一時的な休止期脱毛症であり、時間が経てば自然に回復することが多いとされています。もし症状が長引くなど、不安な場合は、皮膚科医に相談することをお勧めします。
コロナワクチンで脱毛は起こるのか?