それは本当に、ある日突然のことでした。いつものように髪をとかしていると、後頭部に指先ほどの大きさの、つるりとした感触の箇所があることに気づいたのです。鏡で確認すると、そこには確かに髪の毛が全く生えていない、円形の脱毛部分がありました。いわゆる円形脱毛症です。頭が真っ白になるとはこのことか、と思いました。最初は「気のせいかもしれない」「すぐに治るだろう」と楽観的に考えようとしましたが、日に日にその存在が気になり、不安は募るばかりでした。インターネットで情報を検索すると、ストレスが原因であるとか、自己免疫疾患の一種であるとか、様々な情報が溢れていて、余計に混乱してしまいました。皮膚科を受診すると、やはり円形脱毛症との診断。幸い私の場合は単発型で、範囲もそれほど大きくはなかったため、ステロイドの塗り薬を処方され、様子を見ることになりました。それでも、いつまた別の場所にできるのではないか、このまま広がってしまったらどうしよう、という恐怖心は常にありました。帽子を被ることが増え、人の視線が頭に集まっているのではないかと過敏になり、以前のように心から笑えなくなっていた時期もあります。そんな私を支えてくれたのは、家族や親しい友人の理解と励ましでした。そして、医師から「必ず治りますから、焦らずに治療を続けましょう」という言葉をかけてもらったことも、大きな心の支えになりました。治療を始めて数ヶ月経った頃、脱毛部分にうっすらと産毛が生えてきているのを見つけた時の喜びは、今でも忘れられません。それから徐々に髪は回復し、今ではどこに脱毛があったのか分からないほどになりました。この経験を通して、円形脱毛症は誰にでも起こりうる病気であること、そして一人で抱え込まずに専門医に相談し、周囲のサポートを得ながら気長に治療に取り組むことの大切さを痛感しました。