男性の薄毛ケアにおいて最大の誤解の一つが、「皮脂は悪である」という考え方です。確かに、過剰な皮脂は酸化して毛穴を詰まらせたり、嫌なニオイの原因になったりします。また、脂漏性脱毛症のようなトラブルを引き起こすこともあります。しかし、だからといって強力な洗浄剤で皮脂を根こそぎ取り除くことは、逆効果になる場合が多いのです。皮脂には頭皮の水分蒸発を防ぎ、外部の刺激や雑菌から皮膚を守る「バリア機能」という重要な役割があることを忘れてはいけません。洗浄力の強すぎるシャンプー、特に高級アルコール系と呼ばれる石油系界面活性剤を使用したシャンプーで毎日洗髪していると、頭皮は慢性的な乾燥状態に陥ります。人間の体には恒常性維持機能(ホメオスタシス)が備わっているため、皮脂が奪われて乾燥すると、脳は「油分が足りない」と判断し、防衛反応としてさらに多くの皮脂を分泌させようとします。これが、洗えば洗うほど頭皮がベタつく「インナードライ」と呼ばれる悪循環の正体です。この状態が続くと、頭皮環境は乱れ、未熟な角質が剥がれ落ちてフケとなり、それが毛穴を塞いで薄毛を進行させてしまいます。では、どうすれば良いのでしょうか。答えは「適度な洗浄力」に留めることです。薄毛が気になる男性にお勧めしたいのは、アミノ酸系の洗浄成分を配合したシャンプーです。アミノ酸系シャンプーは、肌と同じ弱酸性で、必要な潤いを残しつつ、余分な汚れだけを落とすことができます。洗い上がりは少しヌルっとした感じがするかもしれませんが、それこそが皮脂膜が守られている証拠です。キュキュッとするまで洗わないと気が済まないという感覚をリセットすることが、頭皮ケアの第一歩となります。また、朝シャン(朝の洗髪)の習慣がある人も注意が必要です。夜に洗って清潔な状態なのに、朝もシャンプーを使って洗ってしまうと、明らかに洗いすぎです。さらに、朝洗髪して皮脂膜が失われた無防備な状態で外出すると、紫外線によるダメージをダイレクトに受けてしまいます。洗髪は基本的に夜の一回にし、朝は寝癖直し程度にお湯で流すだけに留めるのが賢明です。皮脂と敵対するのではなく、皮脂をコントロールして共存するという視点を持つことが、健やかな髪を育むための鍵となります。
皮脂の落としすぎが薄毛を加速させる理由